あなたが「決めた!」と思う前にもう決め始めている

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あなたの選択は、あなたが意識するより前から、あなたの知らない「自分」が決め始めているかもしれません。

「この人はなんか苦手」

「この道を歩きたい」

「よし、今日はサボろう」

わたしたちは日々、「こうしよう!」と自分で決めて、その選択をしたと思っています。

しかし、その判断があなたの意識に上る前から、脳ではすでにその選択に関係する活動が始まっていることが、研究によって示されています。

かな子

じゃあ、わたしたちが普段「自分の考え」だと思っているものは、いったい何なのさ?

今回は、意識する前から始まっている意思決定の研究をご紹介し、そのまだ知らない「自分」に気づくためにも、意識できている「自分」を広げる方法をお伝えしていきます。

目次

決めた!と思うとき、本当にその瞬間に決めているのか

わたしたちが「自分で決めた」と意識するその瞬間は、意思決定の始まりではなく、もっと前から決め始めているかもしれません。

わたしたちは普段、自分の行動をかなりシンプルに捉えています。たとえば、以下の場面です。

  • 今日のランチはこれにする
  • 店頭でときめいた服を買う
  • もうこの人とは関わらないようにする
  • 今日は仕事を休もう

このとき、わたしたちがイメージしているのは、おそらくこんな流れじゃないですかね。

  1. 考える
  2. 決める(=ここで意思決定)
  3. 行動する

まず自分が何かを考え、その結果として選択し、そのあとに行動…だからこそ、自分がある選択を意識した瞬間を、意思決定が起きた瞬間だと考えがちです。

かな子

とはいえ、本当にその瞬間から意思決定が始まっているのでしょうか。

たとえば、初対面の人と話していて、「なんとなく苦手」だと感じることがありますよね。自分では、相手を見たことで、その場で苦手だと判断したように感じます。

でも、人間は自分が判断したその瞬間を、自分自身で正確に把握できているのでしょうか。

実は「自分がある判断を意識した瞬間」と「その判断に関わるプロセスが始まった瞬間」は、同じではないのかもしれません。

この疑問を、実際の脳活動から調べた研究(Soon et al., 2008)があります。

そこでは、わたしたちが自由に選択していると感じる単純な意思決定について、意識的に選択したと報告する前の脳活動から、その後の選択を予測できるかを調べました。

決めた!と意識する前に、脳では何が起きていたのか

その研究では、本人がどれを選ぶかを意識するより前から、その後の選択に関連する情報が脳活動に含まれていることがわかりました。

かな子

これ、めっちゃびっくりですよね。

この章ではこの研究の詳しい紹介の後に、では本人が意識する前からすでに未来は決定されていたのか、という話にまで広げてみようと思います。

研究内容

参加者には、右手か左手のどちらかでボタンを押してもらいます。

ここで重要なのは、どちらを押すかだけでなく、いつ押すかも自分で決めてもらった点です。

その間の脳活動をfMRIで測定し、あとから参加者に、どの時点でどちらを選ぶか意識したかを報告してもらいました。

調べたこと実験の内容
選択右か左のボタンを選ぶ
タイミング自分の好きなタイミングで押す
脳活動fMRIで測定
意識どちらを選ぶか意識した時点を本人が報告
分析意識する前の脳活動から、その後の選択を予測する

その結果、本人が右を選ぶか左を選ぶかを意識するより前の脳活動から、その後どちらのボタンを押すかについて、偶然より高い確率で予測できる情報が見つかりました。

研究では、考えたり判断したりすることに関わる前頭前野や、行動の準備などに関わる頭頂葉の活動に、選択結果に関する情報が、意識に入る最大10秒前から含まれていたと報告されています。

つまり、ボタンを押す直前の「手を動かす準備」だけではなくどちらを選ぶかという判断に関係する情報まで、意識する前から脳内に存在していたということです。

では、10秒前には決まっていた?

ならば、本人が意識する10秒前から、すでに未来は決定されていたのかと考えたくなるところですが、10秒前に脳が最終決定を済ませていた、とまではこの研究から言えません

この研究は、脳活動に含まれるパターンから、その後の選択を予測できるかを調べたものです。そのため、研究から言えることと、言えないことをわけて考える必要があります。

この研究から言えること

  • 意識する前から、選択に関連する脳活動が存在
  • 意識する前の脳活動から、その後の選択を予測できた
  • 意識的な決定の感覚より前から、選択に関わる処理が進んでいた

この研究だけでは言えないこと

  • 10秒前に最終決定が完了していた
  • 脳が10秒前に右か左かを確定させていた
  • 意識には意思決定への影響力がない

この研究から言えるのは、意思決定に関係する脳内の活動は、わたしたちがその意思決定を意識するより前から進んでいるという点です。

これは、人間が自分で考えて行動すること自体への否定を意味するわけではありません。

かな子

むしろ、ここからが面白ポイント。

もし自分が「決めた」と意識する前から、すでに自分の脳の中で意思決定に関わる処理が進んでいたのなら、その「自分」とはいったい誰なのでしょうか。

意識する前から動いている「自分」も、自分

ここからはわたしの私見ですが、意識する前から動いているものを、わたしとは別の自分だと考える必要はなく、それも「自分」だと認識して良い気がします。

わたしたちは、自分というものを「今、意識して考えている自分」だと思いがちです。だからこそ次のように考えたくなるかもしれません。

  1. 自分が意識する前に脳が動いている
  2. つまり無意識が先に決めている
  3. ということは、自分は何も決めていないのでは?
かな子

「え~勝手に決めないでよ~」って感じですよね。

でも、無意識の処理も自分の脳の中で起きています。意識している部分だけが自分で、意識していない部分は自分ではない、とする理由はおそらくありません。

「無意識が自分の代わりに決めている」のではなく、「自分の意思決定は、自分が意識するより前の段階から始まっている」と考えることもできそうです。

つまり、意識している自分が、その瞬間瞬間に全部を決めているんだと考えなくてもいいわけです。

「自分の意思決定には、自分が意識していない段階がある」「その段階も含めて自分」と考えた場合、問題は「無意識に支配されているかどうか」ではなくなってきます。

かな子

ここが超重要!

むしろもっと気にするべきなのは、「自分の中で起きていることを、どこまで把握できているか」ということです。

意識できている「自分」を広げる

自分の無意識を全部コントロールすることはできなくても、自分が意識できている部分を丁寧に観察して「自分」を広げることには意味があります。

わたしたちは、意識する前から意思決定に関わる処理が進んでいるからといって、その前段階をすべて直接意識することはできません。

だからこそ「今の判断は、10秒前の自分の脳のどんな処理から生まれたんだろう」と考えても、それを正確に知ることは難しいでしょう。

かな子

でも、意識に上がってきたものなら観察できます。これは間違いない。

わたしたちが意識するより前から、すでに何かが進んでいるなら、意識できている部分だけでも丁寧に見ていく意味はありそうです。たとえば、以下にあるような自分の中に浮かんだ判断がそう。

  • 「この人は嫌い」
  • 「この仕事は向いていない」
  • 「こんなことをしたら変人だと思われる」
  • 「私は大失敗した」
  • 「あの人は私を嫌っている」

これは、すでに意識できている部分です。だからこそ、そこを起点に詳しく自分を見ていきましょう。

無意識を全部知ることはできなくても、意識に上がってきた自分の考えを丁寧に観察することで、自分が無意識にどう認知しているのかを知ることはできます。

たとえば「あの人は失礼だ」と思ったら、その判断をそのまま現実として受け取るのではなく、「何をされた?」「実際に何が起きた?」「自分はそこにどんな意味づけをした?」と見ていくことができます。

最初は「なんか嫌だ」しかわからなかったものが、「こういう言い方をされると嫌だ」「こういう前提を持っている」とわかるようになるでしょう。

そうすれば、最初に生まれた判断だけでは見えなかった「自分」が見えてくるかもしれません。そこで役立つのが、メタ認知です。

自分の考えを観察するには「メタ認知ノート」

意識に上がってきた自分の考えを俯瞰して観察し、思い込みに気づいて考え方の偏りを整えるメタ認知ノート」を使うと、意識できる「自分」が広がり、今抱えている問題を手放せるでしょう。

かな子

メタ認知ノートについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。

今回の研究を知ると、意識する前から脳が動いているのなら、自分で考えて行動を変えることなんてできないのではないか、と思うかもしれません。

そこまで言い切れるわけではありませんが、少なくとも自分が意識している思考だけが、自分の認知の全部ではないと知っておくことで、現実の問題に振り回されづらくなると考えています。

かな子

具体的に例を挙げるとこんな感じ。

  • 「相手が返信しない=嫌われた」と即断しなくなる
  • 「ミスした=自分は仕事ができない」とまで話を広げなくなる
  • 「断られた=自分には価値がない」と結びつけなくなる

その上で、意識に上がってきた自分の考えを、できるだけ丁寧に観察し意識できている「自分」を広げることが大切です。そのための具体的な方法が、メタ認知ノートです。

事実と解釈をわける

メタ認知ノートでまずやってみてほしいのが、問題が起きたときに、起きた事実と、それに対する自分の解釈をわけることです。

たとえば、誰かに何かを言われて、失礼だと感じたとします。そのときわたしたちは、相手の行動と、自分がそこから受け取った意味づけを、ひとつのものとして扱ってしまうことがあるでしょう。

かな子

たいていの場合、ここで問題が起きます。なぜなら、だいたいそれらはひとつのものではないから。

まだ気づいていない「自分」が、事実と解釈がひとつのものだと勝手に思い込んでいるだけなのです。それに気づくためにも、それらをわけて考えてみましょう。たとえば以下のようになります。

実際に起きたこと(事実)自分の認知(解釈)
LINEを送ったけど、翌日まで返信がなかった私のこと嫌いなのかな
上司から「ここ、もう一回確認して」と言われた私って仕事できないんだ
友達を誘ったけど断られた私と遊びたくないんだ
自分の意見に反対された私のこと否定したいんだ
かな子

あなたもこの時点で「そうそう、絶対その通りだよね」と思っているかもしれませんね。

ここで大切なのは、自分の解釈を否定することではありません。失礼だという判断が妥当なこともあります。嫌われたという推測が当たっていることもあります。

しかし、「自分がそう認知したこと」と「現実そのもの」は、寸分たがわず同じものとは限りません。

事実と解釈は混同しがちですが、これをわけて考えるだけで、自分の考えを少し離れたところから見て、思考の偏りに気づけることがあるでしょう。

もし問題が起きたら、あなたもノートとペンを使って、起きた事実とそれに対する解釈をわけて書き出してみてください。

かな子

おすすめのノートはこちら。わたしも日常的に使っています。

「こう思う」から「なぜこう思った?」へ

事実と解釈をわけたら、次はその解釈がどう生まれたのかを見て、本当にそうなのか考えていきましょう。

かな子

たとえば、あなたが「○○さんが嫌いだ」と思ったとします。

そこで考えるのを止めずに、浮かんだ解釈に対して以下のように深掘っていきます。

  • 何をされたと感じた?
  • 私は相手に何を期待していた?
  • 自分の中にどんな前提がある?
  • 過去の経験が影響していない?
  • 他の解釈はできない?

この質問に対する答えをノートに書き出していきましょう。すると、単純に「相手が嫌な人だから」というひとつの説明だけではなく、以下のような自分の思考の癖が見えてくるかもしれません。

  • 自分はこういう態度を失礼だと感じやすい
  • 以前の経験が今回の判断に影響している
  • 相手にはこう振る舞ってほしいという期待がある

ここまで見えてくると、最初はただの「嫌い」という感情だったものを、自分自身で少し詳しく理解できるようになります。

さらにそこから、思考の癖が本当に正しいのかを深掘りしていきましょう。

もし、「自分はこういう態度を失礼だと感じやすい」とわかったなら、「なぜなら」という言葉をつなげて、その理由を深掘りしていきます。たとえばこのようなイメージです。

  • 「なぜなら」、それは相手をバカにしているということだから
  • 「なぜなら」、人にやさしくないことは悪だから
  • 「なぜなら」、無視されたように感じるから

これはほんの一例なので、あなたが感じる「なぜなら」を素直にノートに書き出していってみてください。すると、意識できている自分の範囲が少しずつ広がっていくことを実感できるでしょう。

それが、実は自分だけの思い込みで、他の人はそう感じていない場合があります。本当にそうなの? という考え方で自分に問いかけることで、実はそれが世界のすべてではなかったと気づけるようになります。

そうはいっても、この例じゃ自分事に考えるのが難しいよ~。

かな子

そんなあなたでも大丈夫!

他にも自分に対する問いの例を以下のページでご紹介しておりますので、ぜひ参考にしてみてください。あなたもメタ認知ノートに取り組んで、落ち着いた自分を取り戻していきましょう。

意識できる「自分」を少しずつ増やしていく

ここで大切なのは、無意識だったものを全部意識化することではなく、「自分が今どう考えているのか」を観察できる範囲を、少しずつ広げていくことです。

たとえば最初は、「なんとなく嫌だ」しか分からなかったとしても、「相手のこの言い方が嫌だった」「自分はこういう言い方をされると失礼だと感じる」「そう感じるのは、以前こういう経験があったからかもしれない」と分かってくるかもしれません。

すると、以前は無自覚だった自分の判断基準や思い込みが、少しずつ見えてきて、知っている「自分」の範囲が広がっていきます。

これは、無意識を完全に操ることとは違います。自分の認知について、自分が知っていることを増やしていくようなイメージです。

そして、それを繰り返していくための方法のひとつが、メタ認知ノートだと考えています。他にもノートを使って思考を整える方法はたくさんあるので、ぜひ別のページも見てみてください。

まとめ

以上が『あなたが「決めた!」と思う前にもう決め始めている』でした。

今回ご紹介した研究では、わたしたちが自分で決めたと意識するより前から、その後の選択に関連する情報が脳活動に含まれていることがわかりました。

つまり、わたしたちの意思決定には、自分が意識できていない段階があるということ。「自分で決める」とは、すべてを意識してコントロールすることではないのかもしれません。

だからといって、「自由意志が存在しない」「すべてが無意識に決められている」「自分で考えることには意味がない」ということではありません。

むしろ、この研究を知って考えたいのは、自分が意識している思考だけが、自分の認知や意思決定の全部なのだろうかということ。

無意識も含めて自分だと考えるなら、わたしたちの意思決定は、自分が意識するより前の段階から始まっています。でも、そのすべてを直接知ることはできません。

かな子

だからこそ、まずは自分が意識できているものを丁寧に観察していきましょう。

起きたことと、自分がそこにつけた意味をわける。自分は何を前提にしているのかを見る。過去の経験が影響していないかを考える。別の見方ができないかを探す。そうして、自分がどう物事を認知しているのかを少しずつ知っていく。

このように、無意識を完全にコントロールできなくても、自分が意識できている「自分」を広げていくことはできます。

  • 「なんか嫌だ」で終わっていた出来事を、「こういうことに反応するんだ」と知る
  • 「私は失敗した」で終わっていた解釈を、「ミスをすると、自分全体を否定する解釈をしやすいんだ」と気づく

そこからさらに、それらは本当に正解なのか? と自分に問い直していくことで、起きている問題から解放されていくことでしょう。そのためのひとつの方法が、メタ認知ノート。ぜひ取り組んでみてください。

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