「認知バイアス」が現実を歪めて認知する本当の本当の理由

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わたしたちは、現実を歪めて認知する「認知バイアス」という機能を持っています。

その理由として、脳のエネルギーを節約できるからとか、速く反応する脳と遅く反応する脳があって…とか、あなたもいくつか聞いたことがあるかもしれません。

かな子

さらにそこから「じゃあ、それはなんで?」という疑問がわいてきませんか?

  • なんで脳のエネルギーを節約したいの?
  • なんで脳を速く反応させる必要があるの??
  • そもそも歪めるくらいなら無い方が良くない???

今回はこういった疑問に対して、藤田政博著「バイアスとは何か」(2021)を下敷きに、認知バイアスが現実を歪めて認知する本当の本当の理由を解説していきます。

著:藤田 政博
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目次

認知バイアスとは

認知バイアスとは、記憶や思考などの偏りや歪み、考え方の癖を指します。これは誰にでも、ほぼ無意識のうちに起こり、直感的に素早く物事を判断することが可能です(「Newton別冊 バイアスの心理学」2023, p.4)。

この章では、認知バイアス自体についてと、認知バイアスがある理由への疑問をまとめています。

認知とは・バイアスとは

認知とは、物事を見たり聞いたりして、それが何かを知覚すること。

  • 自分のこと、自分の周りにいる人のこと
  • 自分が過ごしている環境
  • 起こっている問題、噂
  • 何があって何が無いのか
かな子

これらは五感を使って認知されます。

こういった情報を知ることは、人間が生きる上で必要なものです。

一方バイアスとは、偏りや思い込み・歪みを指します。つまり、五感で感じ取った物事を歪んでとらえることが認知バイアスです。

人間が認知するとき、これまで蓄えてきた知識・経験から推論して認知し、間違っていたら都度修正を加えていくことになるのですが、その際本当の現実とは違って認知してしまうことがあります。

これは目に見えない抽象的なもの(人の心、性格、印象、自分とは何か、など)にも及ぶため、人間が物事を判断するときや意思決定するシーンに影響するのです。

認知バイアスがある理由はいくつかある。けれど…

認知バイアスがある理由としていくつか見聞きしますが、では「なぜそうなのか?」の説明としてわたしは最初なかなか納得しませんでした。よく聞く理由として、たとえば以下の2つが挙げられます。

  • よく聞く理由①脳のエネルギーを節約できるから
  • よく聞く理由②二重過程理論(システム1とシステム2)

これらを軽く解説します。

よく聞く理由①脳のエネルギーを節約できるから

認知バイアスがある理由としてよく聞くのが、脳の省エネ機能が働いているため。だからこそ、これまでの知識・経験から思い込みで判断するんですよ~、という説明です。

かな子

これめっちゃ聞きますよねー。

たしかに納得感あるし「そうなんだろうな」と理解できるのですが、じゃあ「なんで節約しないといけないの?」という疑問がわいてきます。

人間は、脳の容量的に森羅万象すべてを認知できず、自分にとって重要な部分だけ選んでいる、という話も聞きますが、「じゃあ、森羅万象すべて認知できるように進化すればいいじゃん」という話になりませんか?

よく聞く理由②二重過程理論(システム1とシステム2)

二重過程理論とは、ほぼ自動的に無意識に働く直感的な思考(システム1)と、意識して論理的に働く思考(システム2)の2つの情報処理様式があると仮定する理論のことです。

アメリカの行動経済学者ダニエル・カーネマンがこの理論を発展させ、一般書として世に広めた「ファスト&スロー」(2011)が有名。

著:ダニエル カーネマン, 著:村井 章子, 翻訳:村井 章子
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かな子

わたしもこの本読みました! いかに人間が日頃から現実を歪めてとらえているのかがわかります。

この自動的に動いてしまう思考(システム1)が問題児。認知バイアスが起きやすい原因の一端を担っていると考えて良いでしょう。

それを理解した上で、この勝手に働く直感的な思考自体が存在する意味ってなんなの? という疑問がわきます。よく考えて認知できる思考があるなら、それだけが人間に備わっていれば良くないですか?

かな子

わたしが知りたいのはここ! ここなんですよ!

そんな疑問にズバリ答えてくれる本「バイアスとは何か」をベースに解説していきます。

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「認知バイアス」が現実を歪めて認知する本当の本当の理由

「認知バイアス」が現実を歪めて認知する本当の本当の理由は、人間が生き延びるためであると考えられます。

認知バイアスは「人間が生き延びるため」にある

生き延びるために認知バイアスが起こる、という点が結論なのですが、これだとまだ説明不足な気がしますよね。

そこで、まずそもそも人間とはどういうものか、の意識合わせと、生き延びるとはどういう状況を指しているのかを整理していきましょう。

「人間」とはどういう生き物か

人間とは、端的に言うと「締め切りがある生き物」である、という前提があります。

  • 食事が得られなければ餓死する
  • 睡眠時間が取れなければ命の危険がある
  • 適切な時期に生殖できなければ遺伝子を残せない
かな子

大前提、わたしたちは未来永劫生きられませんし、いつでも病気になる可能性があります。

いつでもこうした締め切りがあるので、栄養が偏ってもいいからお腹が空いたらファストフードを食べ、電車の中などチャンスがあれば少しでも寝て体力を回復しようとしたりすることがあるでしょう。

つまり、その締め切りをどこかでうっすら認識している可能性があります。

だからこそ、情報処理が多少不正確であったとしても、おおよそ上手くいく行動を取っていれば人間にとってそれはメリットになります。

「生き延びる」とは何か

そんなわたしたちが「生き延びる」とはどういう状態かというと、自分の遺伝子が受け継がれていくことを指します。

個体としての自分が生き残ることではなく、自分の遺伝子をコピーして、自分と同じ遺伝子を持った個体を残そうとします。個体としての自分は一代で滅びますが、遺伝子は受け継がれた子孫のなかで生き続けます。自分の遺伝子が受け継がれていくこと、これこそ生物が「生き延びる」こととして重要なのです。

藤田 政博著『バイアスとは何か』

こちらは、進化生物学者リチャード・ドーキンスが主張した「利己的な遺伝子」という考え方です。

遺伝子に様々な変異が生じたとき、それが生き残りに適したものだった場合、子孫に遺伝子が伝えられていきます。

人間が生き延びるために必要な要素

生き延びるために生きている人間にとって、必要になる要素は以下の2点。

物理的環境への適応

昼間活動するために自分がいる環境を見分ける、捕食者から逃げる、食べ物の在りかを覚えておく、など

対人関係的(社会的)環境への適応

食料を分けてもらうために他のグループと関係を保つ、手助けしてもらう、協力して狩りをする、捕食者の情報をいち早く知らせてもらう、など

こういった、生活環境への物理的な適応と、他の個体と協力する対人関係的な環境への適応によって生き延びてきました。

さらに、これらの要素に適した遺伝子たちが生き延び、子孫にその遺伝子が伝えられていった経緯があるのです。

不完全な人間が生き延びるための仕組み

生き延びるという大きな目的がある人間は締め切りを抱えている上に、不完全な存在でもあるため、認知バイアスが必要になります。

かな子

わたしたちの体は、最初から完璧で理想的な設計で生まれてきたわけではありません

祖先が、すでに持っていたその体自体に修正を加えながら、その時々によって生き延びるために発生する問題に適応するように変化し、遺伝子へ伝えられてきました。

いったんできあがってしまった身体の仕組みは、多少不都合があってもゼロから設計しなおされることはなく、当面の必要に応えられるように修正しながら次の代に遺伝し、使われます。

藤田 政博著『バイアスとは何か』

『バイアスとは何か』の中で、盲点がないイカの話が出てきます。

人間はイカにならなかった

イカには盲点がありません。

盲点がないイカのように人間の目も進化すれば良かったのに、そうならなかったのは、その方が良いからと言ってこれまでの遺伝子を無視してその地点からいきなりイカの目の構造を持った子供を産むことが困難だったためです。

これを、進化における経路依存性といいます。

時間は遡れないので、一度あるときに選択した身体の仕組みは、後日(何千年後か何万年後かはわかりませんが)不都合が生じたとしても、過去に遡って選び直し進化の過程をやり直すことができないということです。

藤田 政博著『バイアスとは何か』

経路依存性のある不完全な人間だからこそ、目の前に起きる問題をその都度乗り越える仕組みを作ってきました。

その際、たとえ誤った情報処理をしたとしても、その仕組みによって生き延びる可能性が高まるならば、その仕組みは遺伝子に刻まれ伝わっていきます

かな子

その仕組みのひとつが、認知バイアスだったのです。

時間がない不完全な人間が生き延びるという目的を果たすため、ふたつの必要な適応をしていく上で、人間の不完全さと目的の辻褄を合わせるために認知バイアスが生き延びることに有利だったため、遺伝子に伝わりました。

一方で、それが今日のわたしたちを苦しめるひとつの原因となっているのです。

致命的でなければいい

多少の間違いを含んでいたり、偏っていたりしても、ベターな判断を時間をかけず素早く行えることは生き延びるうえで大切(Gigerenzer & Goldstein, 1996)。これをヒューリスティックといいます。

人間は、致命的な間違いさえしなければ生き延びられます。それは成功を収めるよりも大切だからこそ、人間には保守的になるバイアスが備わっているのです。

  • (人間は)時間が無いからこそ素早くできるか
  • (人間は)完璧でないからこそ省エネで手軽にできるか
  • それらすべて致命的でないか

こういった条件を満たせる認知バイアスは、人間が生き延びる目的を達成するために最適だったからこそ、今このページを見ているあなたの体にも刻まれ、連綿と受け継がれてきたことでしょう。

かな子

これが、「認知バイアス」が現実を歪めて認知する本当の本当の理由です。

著:藤田 政博
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現代のわたしたちが認知バイアスと向き合うには

ここからはわたしの余談ですが、現代のわたしたちはマンモスと共に駆け抜けてきた時代の人間よりも、さらに認知バイアスが掛かりやすくなっているのではないか、と考えています。

その理由と、わたし達が認知バイアスどう向き合っていくべきなのかについて解説していきます。

現代人が認知バイアスにかかりやすい理由

現代のわたしたちは、認知バイアスを生み出した時代の人間に比べて、さらに認知バイアスに振り回されやすい環境が整っていると考えています。その理由は、以下の2点です。

  • テレビやYoutube、SNSを見る
  • 不況による労働時間の増加
かな子

あなたにも心当たりがあるんじゃないかなと思います。順番に解説していきましょう。

テレビやYoutube、SNSを見る

手っ取り早く気を紛らわせることができる最適なコンテンツ、それがテレビやYoutube、SNSなどです。

ただでさえ人間という個体には時間が無いというのに、輪をかけて時間を奪っていくそれらによって、より認知バイアスを高める環境が整います。

期待を煽る広告に触れたり、コンプレックス商材で劣等感に付け込まれたり、手軽に情報を得られるからこそ、手軽に不必要な情報までも摂取してしまいます。

その度に、人間は自分が生き延びるためにも今目の前にある情報を次々に処理していかなければなりません。

かな子

特にSNSは無限にスクロール出来ちゃいますからね。

その際、あれやこれや思考を深くしていては、目の前の情報を処理しきれません。次々に流れてくるんですから。

一旦立ち止まり、「劣等感を煽って来るこの文言は本当に真実なのか?」「実は期待を煽るだけ煽って、中身スカスカなんじゃないか?」と考える時間が必要です。

でも、わたしたちはなかなかそうできません。締め切りがある人間は、時間が無いからです。

不況による労働時間の増加

不況によって働かざるを得ない状況が続くと、自分のための時間がどんどん奪われていきます。

日本はバブル崩壊以降、失われた20年・30年と言われて久しく、物価高・円安の状況が続いていますよね。

日本経済は、バブル崩壊後の10年間もの長きにわたり低迷を続けている。(中略)99年春からの回復は短命に終わり、2001年に入ってから景気の悪化が進行している。

はじめに – 内閣府

残業等で労働時間が増加すると、強制的に体は疲弊していきます。

もしくは業務効率化だけが進み、その分仕事の質を求められる機会が増えるでしょう。すると、労働時間が増えずとも必然的にストレスが溜まり心は静かに疲弊していくのです。

もっと言うと、あなただけではなくあなたの親もこの競争社会の波を受けている可能性があります。

かな子

わたしはミレニアル世代(1980~90年代)ど真ん中で、バブル崩壊とともに生まれました。

親世代自体が不況の影響を受けていると考えた場合、少なくとも彼らの子育てにも影響しそうな気がしませんか?

  • (安定しているから)将来は公務員に就くべき
  • (働き手になるから)早く子供を産んで育てるべき
  • (終身雇用だから)誰もがうらやむ大企業に就職すべき

そのためにも、成績優秀であるべきだし、運動神経は伸ばすべきだし、苦手なことは無くすべきだし、習い事は増やすべきだし、就職に有利な大学に入るべきだし、求められる優れた存在になるべきだよね。

かな子

だって、不況なんだから

こう言われなかったとしても、親たちの中で無意識に潜む不況への恐怖によって、「あれをしろ」「これをしてはいけない」と幼い頃からプレッシャーをかけていた可能性があります。

実際、ミレニアル世代から完璧主義者の割合が増えている研究も発表されています(Thomas Curran, 2017)。

だからといって彼らを許せ、とは言いませんが、わたしたちが今悩んでいることは、親たちが抱えている不況への恐怖によって縛られていただけかもしれません。

そうやってわたしたちの心身の疲労が続くと、まず人間は自分自身を休ませようとしてくるでしょう。

休ませようとする反応

栄養を蓄えるためにお腹を空かせたり、いつもよりあくびを出して寝させようとしてきたり、無意識に睡眠や食事などを優先して摂りたいと考えているかもしれません。生き延びるために必要なあれこれを推し進めようとしてきます。

そんな疲労困憊な自分にとって、目の前に起きる様々な問題を手っ取り早く解決したいと考えるのは自然なこと。

義母の態度がいちいちムカつく

男は頑固で言うことを聞かない生き物

女は媚びれは生きられるから楽でいい

あの人は自分を見下しているに違いない

かな子

これらの判断を瞬時に行っているときは注意です。

単純にあなたは疲れていて、落ち着いて考える時間が取れていない可能性があります。そんな状況で手を伸ばすのは、結局テレビやYoutube、SNSなど時間を浪費するだけのコンテンツなのかもしれません。

現代人の認知バイアスとの向き合い方

そんな忙しすぎる現代人が認知バイアスに抗うには、時間をしっかり取りメタ認知を取り入れて物事と向き合うと良いでしょう。

ここまでくると、わたしたちがこの認知バイアスに抗うこと自体無意味なのでは…? と思われるかもしれませんが、実はそんなことはありません。

リチャード・ドーキンスは「利己的な遺伝子」について、あくまでも生物学的な事実を述べているだけであって、「人間がどうあるべきか」という道徳的な話とはまた別だと主張しています。

かな子

つまり、認知バイアスにとらわれる生き物だからといって、認知バイアスにとらわれてしかるべきとは言えないのです。

「~するのが当然」から「だから~すべきだ」のように、快い・好ましい性質を善や道徳と結びつけることは誤り、とする自然主義的誤謬しぜんしゅぎてきごびゅう(ジョージ・エドワード・ムーア, 1903)という考え方があります。

自然主義的誤謬の例

  • 「男性は遺伝子を残さないといけない生き物だから、浮気しまくるのは致し方ない」とは言えない
  • 「自然界は弱肉強食なのだから、イジメはあって当然」とは言えない

だからこそ、たとえ利己的になるよう遺伝子がバイアスを通してわたしたちをコントロールしようとしてきたとしても、それに従わず意図的に止めたり、軽減させたりすることは可能です。

かな子

その上で、締め切りを抱えているわたしたちが、いかに「時間が無い」という感覚を減らせるかが大事。

この「時間が無い」という感覚が現実への認知にどう影響するのかについて、アドバイスを素直に聞けないという視点から以下のページで解説しています。

時間ができたら、自分自身を客観的に見ることができるメタ認知をすると、今抱えている問題についてじっくり・ゆっくり考えることができ、認知バイアスが起きにくくなっていくでしょう。

かな子

メタ認知をするなら、わたしが以下のページで解説しているメタ認知ノートにぜひ取り組んでみてください。超簡単です!

まとめ

以上が『「認知バイアス」が現実を歪めて認知する本当の本当の理由』でした!

わたしたちが認知バイアスを起こす本当の本当の理由は、人間が生き延びるためです。

人間という個体は締め切りを抱えて生き延びようとするので、手っ取り早く致命的なエラーを起こさない認知バイアスで現実を切り抜けてきた歴史がありました。

さらに現代では、認知バイアスが起きやすい状況が整っていると考えられるでしょう。

この記事を書いてから、とんちきな行動を取る人に対して、「そういう行動を選択しなければならないほど、この人にとっては時間が無いと無意識に感じているんだろうな」と思えるようになりました。

今すごく苦しくてどうしようもない状況だからこそ、その人にとってその選択は必然だったのかもしれません。

かな子

今このページを読んでいるあなたはどうですか?

あなたが今悩んでいる問題は、あまりにも時間が無い意識の中で、それでも今を生きようとしているあなたが絞り出した結果かもしれません。

認知バイアスは、「時間が無いと思い込まないといけないくらい、今あなたはしんどい状況ですよ」という自分への警告の役割もあるのかなと思いました。

その警告、実は認知バイアスによって現実が歪められているかもしれませんよ。それを回避するためにも、時間を作ってゆっくりメタ認知ノートに取り組んでみてくださいね!

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